うまいもの工房・加護や

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奈良・いにしえの銘醸蔵「花巴(はなともえ)の会」

加護や 勝田きゃらん店 2008 年 10 月 18 日

今回のきき酒会は、あるお客様から催す「きっかけ」を頂きました。本当にありがたい事です。実は、イベントの前段階で、奈良の御芳野商店さんが、とても個性的な酒造りをしているということをお聞きしていました。酒の銘柄は「花巴(はなともえ)」で、いかにもしなやかで美味しそうな名前です。

試飲用を蔵から直送してくれるというので、早速お願いしてみましたが、噂どおりのお酒で、口に含んだ時にしっかりと個性を主張しながらも、飲み込んだ後に鼻に抜けていく香りに米の旨み成分が凝縮されている感じ、ボリューム感があるがゆえに、一瞬米焼酎かと思うくらいでした。しかし、当然そこまでアルコール度数は高いはずもなく、あの特徴的な酸は、蒸留酒である焼酎にあるはずもない!との理由から、驚きかつ感動!の一本となりました。

蔵元は「米の旨みが伝わる酒」を経営理念とし、「酸ある酒」にこそ、清酒を楽しむ醍醐味と面白さがあると考え、流行に左右されない蔵元独自の上質な「酸」の追求をしておられるようです。端麗辛口の新潟系やサラリとした東北系が好まれる関東や茨城に対して、どっしりとした厚みと美しい酸が際立ち、濃淳旨口タイプのこのお酒は、関西以南にファンが多いと言われています。しかし、「だからこそおもしろい。茨城でも希少かも知れないこのタイプの愛飲家のために、個性あるお酒として、マニア向きの一本として紹介していきたい!」そう思って小さな取引を始めました。

もう一つ、この蔵に興味ある出来事は、「菩提もと」造りという、いにしえの酒造りの方法を研究し、復活させたということです。そもそも、清酒の発祥は、古くは室町時代にさかのぼります。奈良の「菩提山正暦寺」は、「日本清酒発祥之地」の碑があり、澄んだ酒いわゆる清酒(すみさけ)発祥の地とされています。当時の酒造りを古い文献から探ってみると、実際に正暦寺において正暦寺領内の米・水により醸造しており、生米を用いて酸を出すことで腐造を防止するという全国的にも極めて珍しい醸造法のひとつだったそうです。この酒造りは、「菩提もと」づくりと呼ばれ、彼岸の酒と称され、気温の高い時期に仕込んでも腐らせずに酒にすることが出来、伝統的な酒造りの奥深さを感じさせたそうです。

しかし、今ではすっかり絶滅していた酒母「菩提もと」を復元し、その酒母によって仕込まれた純米酒づくりがなされました。そのお酒は、「花巴菩提もとづくり」という銘柄で、上質の酸味と濃醇甘口な味わいを備えており、口当たりの良さの中に引き締まった味のキレを感じさせます。

実は会当日を迎えるまでには、お料理構成やお客様の嗜好を想定しながら、我々スタッフにも結構なプレッシャーがかかりました。あの酸の厚みのある日本酒をきれいに受け止め、寄り添える美味しいお料理は何か?最後まで楽しみながら美味しい時間が過ごせる料理とお酒の在り方はどうあるべきか?いつも考えることではありますが、とても悩みました。

お飲みいただいたお酒のリストとお料理は、以下の通りです。

【花巴 袋吊り斗瓶取り】

香りは含み香を主体とし、自然で心地よい吟醸香が特徴です。このお酒は搾り機での圧搾を行わず、酒袋から重力のみで滴り落ちる酒だけを詰めた、希少な限定酒です。

【花巴 菩提もと純米酒】

上質の酸味と濃厚甘口な味わいを備えており、口当 たりの良さの中に引き締まった味の切れを感じます。室町時代からの歴史の重みを感じながら、ゆっくりと堪能しました。

【花巴 山廃特別純米酒】

最初酸を多く感じますが、次第に深みのある味わいの中にスッキリとした感覚を覚え、その酸が癖になります。山廃独特の酸味・うまみ・甘みが重なり合い、口当たりをまろやかに感じさせました。

【花巴の会 きゃらん特別懐石】
  • 前菜 ◆ 鮟肝松風 / 那須牛ローストビーフ スダチバターソース / 柿玉子 / 雲丹と百合根の白扇蒸し / サーモンの絹田巻き / 生イクラおろし / スダチ釜 / 鰻錦糸巻き / 菊花丸十
  • 椀物 ◆ 鱧と松茸のお清し / 海老 三つ葉 スダチ 紅葉麩
  • 造り ◆ 鮪とアボカドのカルパッチョ山葵ドレッシング
  • 焼物八寸 ◆ 太刀魚薬玉焼き / 木の葉南瓜 / 湯葉越前焼き / 零余子と占地の松葉串 / 海老子宝焼き / 銀杏 / 紅白はじかみ
  • 箸休 ◆ 烏賊黄身酒盗和え / 丁字茄子
  • 蒸し物 ◆ 黒ソイ信州蒸し / 柚子胡椒庵 / 紅葉人参 木の葉椎茸 銀杏粟麩 万能葱
  • 主菜 ◆ イベリコ豚のグリル 辛味噌 ポン酢
  • 食事 ◆ 木の子と栗の炊き込み御飯 / 香の物 赤出汁
  • 甘味 ◆ 蕎麦のクレープ / 柚子シャーベット

以上が、とても悩んで、当日までの間に試作や試食も行い、たどり着いたメニュー構成でした。お酒に、それぞれの力があり、そのお酒に負けないお料理や味を追求しようとすると、懐石全体として重くなりすぎる。そこで、それぞれのバランスの中で、瞬時にお酒と料理が主役と脇役をうまく演じ分けるように考えました。決して負けるとか勝つとか考えないこと。沿いあったり、主役を引き立て、脇役としての存在感を守る!これが極意かと、思いました。

いろいろと悩んだ甲斐もあり、お陰さまで、お酒はもちろんお料理のご評価も高く、非常に盛会となりました。蔵元から来てくれた青年も、一生懸命お客様の接待を心がけてくれ、同時に、今後の蔵の方向性や酒造りの意向を熱く語ってくれました。やはり、こういう心の交流をすると、一緒になって店づくりや酒づくりしている感じがして、お客様もお店や蔵元にとっても、双方すごく満足感の高い会となりました。サポーターやファンの心理って、こういう触れ合いから始まっているのだなぁ〜と改めて実感!の熱い会でした。

当日のお客様の感嘆の声をいろいろ拾い集めましたが、最も印象的なコメントはこうでした。「こんなに日本酒の酸が美味しいと感じるなんて、今日は眼からウロコが落ちました。」でした。私もそう思いましたし、共感できて、とてもうれしかったです。

お酒もお料理も堪能していただいたその後、まだたどり着ける方だけには、サプライズな蔵持参の古酒を楽しんでいただきました。まずは、20年古酒でありながら、低温貯蔵によりまったく色づかないままのきれいな透明感にびっくり!通常古酒にありがちな酸化熟成によるひね香は少なく、むしろフレッシュとも感じさせるくらいのふくよかな米の香りに溢れていました。味わいのコメントは、トロッとしていてまろやか、美味しい!もう最高!これしかいい様がありません。

最後の最後まで、会話に華を咲かせて楽しんでおられたお客様にも、当日の会の感想をお尋ねしましたが、あまりにもいい出逢い(人・会話・酒・料理など)に満ち溢れていたので、帰りがたくていますとの事。心からご満足いただけたみたいで、私たちも、本当にうれしかったです。

後片付けしながらも、大盛況のうちに終えられたこと、蔵元の青年と喜び合いながら、またあれこれ話しましたが、本当に清々しいいい青年で、ますますバックアップしたくなる若者でした。近江商人の教えに、物を売る前に、自分を売れ!という教えがありますが、彼そのものの一生懸命さが、今後も将来の売りにつながると確信しました。

このたびは、「花巴の会」で大変お世話になり、有難うございました。花巴の橋本晃明でございます。

上田社長様をはじめ、店長仁平様、調理長梶山様、加護やのスタッフの皆様には、感謝申しあげると共に感激しております。花巴という、1つのお酒に向き合っていただけたこと、さらにお客様が心をひらいてくださる演出など、上田社長様の信念をお店全体で感じることができ私自身も大変幸せな気持ちをいただくことができました。おそらくほとんどのお客様が、奈良から来た私と花巴を知らない中、多数のお客様から大変よいコメントをいただけましたことを、とても嬉しく感じました。なにより、個性あふれる酒を目指す当蔵元の方針をご理解いただけましたことに、勇気づけられ、目指す方向性を再確認させていただいたように感じます。まもなく始まる今年の酒造りに向けてのパワーを充電して帰路につくことが出来ました。お客様からの「うまい」と言う言葉が、造り手にとっての原動力であることをあらためて感じる事ができた酒の会でした。また、「お客様に伝える」ことのすばらしさを知ることが出来たよい機会となり、大きく気持ちを後押ししてくれるとともに、大変多くのことを得ることが出来ました。「菩提もと」を通じていただいた、ご縁の大切さを実感している次第です。今後とも宜しくお願い申しあげます。有難うございました。

御芳野商店 橋本晃明

本当に花巴と調和した料理を創作していただき、心より御礼申し上げます。スタッフ一同、最高の料理にとの思いがひしひしと伝わってきて、感激いたしました。 料理の試作の段階で料理全体が重くなりすぎないようにとの配慮から、メインのイベリコ豚のグリルをあえてさっぱりとポン酢で提供したのは正解でした。私の好みでは、鮪とアボカドのカルパッチョ(山廃ドレッシング)が、最高でした。あるお客様がおっしゃっていたとおり、花巴のように個性的な日本酒は、それに合った料理でないと美味しく楽しめないでしょうから、加護やさんのような酒の個性に合わせた料理ができるお店でないと、無理だとは感じていたのですが、流石ですね。「花巴のような日本酒も加護やではこのように料理できますよ。」という自信に溢れていました。加護やさんの益々のご発展を祈念しております。

日本酒と料理の調和を愛するTより


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